3.設計情報一元管理による業務プロセス革新 シャープ株式会社 川崎敬二
関西EACが発足した当時(約50年前)の主活動は研究会名の通り“設計情報の管理”の議論から始まったことは容易に想像できる(筆者がちょうど産声を上げているころからこの活動が長期間に渡って行われている事に驚かされている)。
設計情報とは設計図面を指すだけではなく,開発プロセスの上流段階である製品企画書から,設計DR(Design Review)で必要となる資料,実験結果の資料,製品を出荷するにあたって必要な提出書類等と設計行為が始まってから商品が出荷されるまでに作成される各種書類に加え,市場や顧客に商品が渡ってからの品質トラブル情報も対象となるだろう(ただし,企業によっては,正式に捺印した書類のみを指す場合もある)。
これら設計情報を従来の紙の管理から電子図面に置換え一元管理することで,様々な情報が場所や時間を問わず多くの部門で共有することができるようになり,設計業務のスピードアップが図られる。ただし,一元管理は,決して電子的な管理のみを示すのではなく,“正”の図面や書類の考え方,活用する骨組み,活用する運用ルールが確立して初めて本来の一元管理による共有が可能となる。
一方,企業を取り巻く環境も大きく変わり,グローバルな競争が厳しくなる中,従来の業務プロセスでは競争に勝てない場合が出てきており,業務プロセス自体を見直さざるを得ない状況になっている。この解決手段の一つとしてITを活用して設計情報を“管理”と言う視点から業務プロセス革新に繋げる必要性が出てきた。
本章では,情報管理ツールのカタログに掲載されているような“導入効果”を中心に記載するだけでなく,研究会のメンバーが実際に運用した中で分かった“苦労した点”“失敗した点”をできるだけ多く記載することで,同様な課題を事前に検討し,各企業が効率的に取り組める事を願うものである。
<以下、詳細は本書参照>